製品化のために追加したこと

研究の成果が製品化に結びつかないことが多いですが,この研究開発と製品化の間にあるギャップのことを死の谷とよばれています.

国を挙げて,研究成果を事業しようという取り組みが活発に行われていますが,なかなかうまくいかないことが多いですよね.死の谷と呼ばれるだけあって,生半可な気持ちでは越えられないものなのでしょうか.やはり研究に密に関わって,その内容に詳しい人が製品化までもっていかないと,なかなか難しい気がします.

担当者間でのコミュニケーションのオーバーヘッドがかなり負担になって,途中で資金的な制約や,時間的な制約が出てきて,うまくいかなかったりするかと思います.そうはいっても研究側は研究を継続的にしていかないといけませんので,製品化に取り組む時間が取れないというのが実体でしょうか.働き方改革も叫ばれている現状ですので,生産効率を極限まで高めて,やるしかないですね.

さて,今回と次回では弊社が研究成果を製品化にするまでに,追加したことと,逆に外したことをご紹介しようと思います.

今回はやったことについてご紹介します.

弊社のソフトウェアは,入力された3次元CADモデルを加工するためのNCプログラムを自動で生成するようなソフトウェアとなっていますが,研究段階ではNCプログラムを生成するということには取り組んでいませんでした.

研究段階では,3次元CADモデルから加工除去領域の自動抽出とその加工順序や加工条件を自動で決定するところまででした.工具経路を計算する部分は,ソフトウェアに組み込むのは結構ハードルが高いので,既存のCAMソフトウェアにアドオンしてNCプログラムを生成していました.切削加工は工具が通った通りに,被削材が削れてしまうので,少しの工具経路の違いが加工精度に現れるので,作りこみが大変なんです.

しかし,実際に製品化を目指したときに,既存のCAMソフトウェアにアドオンしている状態だと,我々のソフトウェアを使っていただこうと思うと,その既存のCAMソフトウェアも併せて購入してもらわないといけないとう状況になってしまします.ちなみに既存のCAMソフトウェアというのはアカデミックで使う分には,安価に使わさせていただけますが,ビジネスで使う分には結構高額になります.そもそも我々は一品生産向けの生産の競争力を向上したいという願いがあるので,初期投資に高額なCAMソフトウェアの導入はまずないなと思いました.

そこで独自に工具経路を計算して,NCプログラムまでを独自で生成するようなソフトウェアに仕上げました.正直相当苦労しましたし,まだまだ気づいていない不具合もあるかもしれません.もちろん,既存のCAMソフトウェアではできていることが,できていないという部分もあるとは思います.しかし,逆に我々にしかできない自動化やカスタマイズが可能になっているという自負はあります.

それに,工具経路の計算まで考えていく中で,NC工作機械側についても上辺だけでなくしっかりと深く理解する必要が出てきて,加工の知見も増えましたので,研究の幅を広げるという意味ではよかったのかもしれません.

兼業(副業)を認めているある企業の経営者も言っていましたが,「インプットが増えることはよいこと」ですので,いろいろとアンテナを張ってこれと思ったものには,食わず嫌いせずに手を出していくのがいいですね.

次回は,製品化のために逆に外した項目について,ご紹介します.